小・中・高校を通じて体育は得意だった。ボールを持つとセンスがないが、体力を使っての競技は長距離も短距離も早かった。幼稚園のとき、徒競走で転んだが、持ち直して3位に入った。高校のときは、立田山の裾野の稜線を軽く登り降りするコースでマラソンをしたが、マラソン大会では、全校で一桁に入った。体力もあり根性があったからかもしれない。中学のとき水泳部に入り、平泳ぎで千メートル以上を毎日泳いだ。今も週に2回は泳いでいる。年を取りガタが来ているので、泳ぐと身体のあちこちにオイルが満ちすべてが循環していくようで心地よい。
スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンさんの著書『運動脳』には、脳の働きについての最新の脳科学的な実証実験やそれによる知見が記されている。私たちはサバンナで獲物をとるために走り回っていたが、脳の実体はその頃と変わらないという。走ると脳の側坐核という部位から報酬系の神経伝達物質が出て、それは私たちに気持よさをもたらす。そこでもう一度走ろう、となる。ドーパミンとかセロトニンなどの神経伝達物質が運動により活性化する。アンデシュさんは、運動が身体にいいだけではなく、脳の記憶力や思考力の鍛錬にもなるとこの本の中で力説している。脳のしくみから説いていて説得力がある。彼は「運動は脳にいい」という説を喧伝しても誰も儲からないから、この説が広まらないのだと書いている。
iPod(アイポッド)は、開発者に莫大な利益が転がり込んだ。しかし、開発した一人、スティーブ・ジョブズは我が子にはiPodを触らせないそうだ。それは、iPodを見すぎることが脳内の報酬系部位に働きかけすぎて、却って脳へ悪影響をもたらすものと認識しているからだという。アンデシュさんはスウェーデンで精神科医をしていて、鬱病や昼夜逆転の子どもが増えたのをおかしいなと感じ、本を読んだり学界に出たりして自分でいろいろ調べて、『スマホ脳』『運動脳』を書いた。彼は、太古からあまり変わっていない私たちの脳が、新しい文明の機器に対応していないために鬱病などを罹ってしまう場合もあると述べる。スマホが魅力的過ぎて私たちは過度に依存してしまうのだ、それが依存症につながるのだと。アンデシュさんによると1週間に30分以上の有酸素運動を2回以上すると脳が活性化するそうだ「私、運動が好きで良かった。皆さんにも適度な運動をおススメします」。
紹介する本:『運動脳』アンデシュ・ハンセン
私たちの脳が太古の昔からその組成や働きにおいてあまり変わっていないというアンデシュさんの主張には説得力があります。若者や大人に昼夜逆転や自律神経の不調などが増えている原因を一つに特定することはできませんが、スマホへの依存がなかったら、今の状況はかなり改善されるでしょう。スマホの誕生は1992年。アップル社が2007年に初代iPhoneを発表し、それ以降スマートフォン市場が爆発的に拡大しました。今ではスマホを持っていない大人はごく僅か。小さい画面を日に何度も見つめる習慣は、鬱病にならないまでも、視力の低下や目の疲れをもたらし、健康にはマイナスになっています。『運動脳』は、太古の人類のサバンナを駆け巡っていた日常に戻ることはできない私たちに、でも最低限の運動をした方が身体だけでなく脳の活性化にも役立つと説いていて説得力があります。