小学校低学年の頃、熊本少年少女合唱団に所属し、熊本放送にあった練習室でコーラスを楽しんだ。メゾソプラノを務め市民会館でウイーン少年合唱団とコラボしたこともある。コーラスは、自分の声と別の音階を歌う人の声の複数のハーモニーを耳で味わいながら歌うのが楽しい。
今でもカラオケに行くとハモりたくなる。大抵の単純なメロディーなら、3音下げると綺麗な和音を奏でられるので、即興でハモると喜ばれる。娘たちを生んだ後、夫の仕事について行った水俣ではお母さんコーラスに所属し、水俣市文化会館での発表会に出演した。熊本に帰って来てからは九州女学院高校の同級生を師と仰ぎ有志10人で結成した「マードレコール」という合唱団活動を行い、国際交流会館のホールでコーラスを披露した。
熊本放送では、オーケストラの生演奏を舞台裏から見る機会に恵まれた。生のオーケストラのダイナミズムはレコードやCDでは味わえない。フルオーケストラの発する音は、空気の震えなのだなと実感できる。その迫力は、耳だけではなく身体全体で味わうものだ。
まつてフジテレビと文化放送の専属だった日本フィルハーモニー交響楽団は、1972年に全楽団員が解雇通知を受け、市民が支えるオーケストラに姿を替えた。1975年1月の第1回の九州公演を民放労連が支援し、翌年に熊本放送に入った私もコンサートの度にチケット作成やポスター貼り、コンサート当日の運営を手伝うようになった。RKKや熊本日日新聞社に勤める人たちだけでなく、農家や畳屋さんや主婦などさまざまな人たちが、音楽が好きというたった一つの理由で事務局員として集う爽快さ。皆手弁当で駆けつけ、音楽談義に花を咲かせた。
コンサート後の交流会では、音楽を生業にしている人と初めて親しく話した。楽しい人が多い。有名なソリストや指揮者もコンサート後の交流会に気軽に参加し、何より楽団員はお酒が好きで話が面白く、熊本を気に入ってくれた。
日本フィル事務局活動をきっかけに結婚した人も多い。FMK社長の山口和也代表とその奥様も日フィルが縁で結ばれた。また北海道から熊本に嫁いで来られたミヤデンの社長夫人も事務局員だった。
東日本大震災後の復興コンサートや熊本地震後の激励コンサートにも積極的に手弁当でやって来る日フィルのメンバー。壺溪塾はメセナという文化活動の一環で九州特別会員になり80周年には記念コンサートをお願いした。
今やだいぶ高齢になった事務局員たちだが、定期的に集まり、ボランティアで日フィルを支えている。50回目の記念コンサートは2025年2月19日(水)19時から熊本県立劇場で行われる。音楽は自らやるのも聴くのも楽しい。一生味わえる癒しのツールだ。